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この記事の概要
住宅の購入、住み替えを検討している皆様は、多数の物件情報を手に入れ、その中から価格や地域、広さ、築年、駅からの距離など、様々な条件から、購入物件の候補を絞り込んでいるはずです。
そして、絞り込んだ物件を内見して、さらに検討、そして決定といったプロセスが一般的です。ただ、新型コロナウイルス感染のリスクを避けるため、しばらくはできるだけ外出は控えたいという方も少なくないでしょう。そのためにも、不要な物件内覧を行わないことを考える必要があります。
その際に有効なことの一つとして、間取図をチェックすることがあげられます。価格、広さ、築年といったデータは数字で表されているので、自分の条件とすぐ比較することができます。また、外観の写真も見れば好みかどうかすぐ分かります。それに対して、間取図は図で示されているので、チェックにコツが必要です。
間取図の読み取り方、検討の仕方は人それぞれかと思いますが、今回はしっかり効率的にチェックするために、「部屋ごとのチェック」「つながり・動線」「間取りの可変性」の3点を説明していきます。
物件を探す際、面積(戸建ての場合は延床面積、マンションの場合は専有面積)は、誰しもがに気にされるかと思います。その面積を割り振ったものが間取りであり、大まかな構成について「○LDK」などと示されます。
間取りでまず気にするのは「部屋数」ではないでしょうか。寝室や子ども部屋、最近ではリモートワークスペースなど、家族数や使い方に見合った個室の数が求められます。
大切なのは、部屋数の確保で安心するのでなく、部屋ごとの広さもきちんと吟味するということです。というのは、地価や建設コストが高騰している影響で、分譲価格を抑えるために比較的、面積を絞った物件も登場しているからです。部屋数は同じでも、1部屋の専有面積がコンパクトになっている可能性があります。
また、部屋のサイズは「○帖」や「○㎡」などの数字で表されます。畳のサイズは、「京間」「江戸間」「団地サイズ」など、地域や物件によって広さが違います。古い物件など、分譲当初の呼称をそのまま使っている間取図も時折見かけます。
「○㎡」という表記の場合にも注意が必要です。マンションなどでは「壁芯(へきしん/かべしん)面積」で示されていることが少なくないからです。「壁芯」とは、その名の通り、壁や柱の「厚み」の中心で、それを基準にした計算値です。実際に住まい手が利用できる床面積ではありません。ちなみに壁を含まない部屋の実スペースは「内法(うちのり)」面積」と呼びます。つまり、数字で思い描いている部屋のイメージより、実際のスペースが狭く感じる可能性があるのです。
「LDK」もまた、イメージと実際の広さとのギャップを感じやすい場所です。というのも、LDKの形状は物件によって千差万別だからです、同じ面積でも正方形に近いものと細長いものとでは広さのイメージが違いますし、実際の使い勝手も大きく変わります。また、キッチンやLDKとして表示された床面積は、キッチン設備を置く前の面積です。大型のシステムキッチンが備え付けてあれば、狭く感じるかもしれません。
収納スペースが十分かのチェックも重要です。先に説明したようなコンパクトに設計された物件は収納スペースが削られている可能性があります。ただ、収納は、トランクルームや荷物預かりサービスなどの利用によって、カバーできる部位ともいえます。
実際に内見して「希望に合わない物件をわざわざ見に来るのではなかった」と落胆することを減らすためにも、事前に間取図からさまざまな情報を読み取る習慣を付けたいものです。
部屋数だけでなく、部屋同士のつながり=動線のチェックも大切です。といっても、難しく考える必要はありません。間取りが自分たちの生活スタイルとフィットしているか、使いやすそうかなど、購入後の暮らしを、間取り図を見ながらざっくりとイメージしてみればよいわけです。
購入後の生活のイメージを、といきなり言われても戸惑うでしょうから、一例としてLDKや水まわりの動線についての検討例を示してみます。
●表1 動線の検討例
例えばキッチンとダイニングは一体がよいのか、別々の方が使いやすいのかなどは、購入希望者によってそれぞれ異なります。自分の暮らし方と間取りがマッチしているかをチェックしましょう。また、個室に関しても、玄関からいったんリビングに入ってから居室に向かう動線と、廊下を経て玄関からそのまま向かえる動線があります。家族間のコミュニケーションを重視するのであれば、前者の動線の方が接触の機会が増えるので都合がいいといった判断もできます。
トイレも頻繁に使う重要な場所です。廊下に隣接して独立している間取りと、洗面脱衣室や風呂場と一体的に配置されている間取りとどちらが好ましいか、あるいは寝室との距離感は適切かといった点について、生活スタイルや好みに合わせて検討しましょう。
現在は問題ないと判断した間取りも、将来は使いづらくなる可能性が出て来ます。それは、家族それぞれの加齢に加えて、子どもの誕生・就学・就職や結婚、ご主人の退職、親との同居などによって住まいの活用状況が変化していくためです。
賃貸住宅とは違って、住宅を購入した場合、基本的にはそれなりの長期間、そこで暮らすことになります。そのため、こうした「ライフステージの変化」を意識する必要があるのです。それに対応するには、将来のリフォームを想定した「間取りの可変性」についても購入時点で考慮に入れておきたいものです。
広めの個室があれば、子どもが複数いた場合、成長した際に分けて専用の個室を用意することができます。子どもが成長して別居することになった場合、子ども部屋がLDKに隣接していれば、それを取り入れて、より広くLDKとして使うといったことも考えられます。
ただし戸建て・マンションとも、建築の工法によっては撤去できない壁があるなど、将来のリフォーム時の間取り変更に制約がある場合もあります。こうした制約の有無についても、あらかじめチェックしておけば、将来あわてなくて済みます。自分の好きなように手が入れられる戸建てだからといって、無理なリフォームは耐震性を弱めてしまう可能性があるので禁物です。
●表2 戸建て・マンションの構造・工法の一例と可変性
※可変性についての一般的な比較であり、工法の良し悪しの説明ではありせん
※その他、給排水管の勾配など、他にも間取りの可変性に影響する要素があります
最近、増加している耐震チェックの際に、「将来大きなリフォームを考えた場合、どこまで変更が可能か」といったことを相談しておくのもいいでしょう。物件の構造を知っておくことが、後のリフォームの際の検討に大いに役立ちます。
言うまでもないことですが、どんなに間取図を子細にチェックしても、最後は内見によってきちんと確認することが欠かせません。広さの感じ方は天井高によっても大きく変わります。平面図である間取り図をみるだけでは、部屋のイメージを正確に把握するのは難しいでしょう。日当たりや風通し、開放感など、間取図だけでは読み取れない情報も多々あります。
内見の際に漠然と室内を見るのではなく、目的とポイントを絞ってチェックするために、事前の検討が大切です。気になる点が事前に分かっていれば、内見も充実したものになります。購入後に不便さに気づいて「しまった!」と後悔するリスクも減らせます。事前の間取図のチェックが満足度の高い家選びにつながります。
谷内 信彦(たにうち・のぶひこ)
建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)
※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
※ 2020年11月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。
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